トライアングル【最終章】連想(ツラナルオモイ)②-2


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小学1年生の時、初めて亮輔の家にゲーム機がやってきた。
"マリオカート"。
小学生低学年でも気軽に出来るゲームだ。

亮輔は始める前にじっくり説明書を独占して勉強をする。
しかし、祐介は説明書を読むのが面倒くさい。
「りょうすけ〜。はやくやろや〜。」
説明書を読むのを任せ、それでも亮輔が几帳面に1ページ目から1ページずつ読み込んでいくもんだから
しびれを切らして「はやく〜〜!」と、我慢出来ずに両腕を上下にフンフンさせる。

「ちょっとまって、、、。」
それでも亮輔は焦らず。それも仕方ない。亮輔のお家のゲームだ。梨緒も「まぁまぁ」となだめる。
仕方なく祐介も「まだ〜?」「そろそろ〜?」と、言いながらもしっかり待っているしかなかった。
しばらくして、
「よし!じゃあそろそろはじめようか。」
亮輔がようやくスイッチを入れる。

"チャッチャー"と軽快な音とカッコイイオープニング画面がテレビに流れ出す。
「おお!」
一同画面に釘付け。

これは面白そう!と、一同さらにテンションを上げる。
「じゃあせつめいするね。」
しっかりと説明書を読んだ亮輔が"1P"というコントローラーを先取りしてここぞとばかりに主導権を握り説明を始める。「もういいわ〜。」という祐介をよそに。
「きほん、この"Bボタン"がアクセルでどんどんスピードがあがって〜。
まがるときはこの"やじるしボタン"で〜。」
実は説明書には"ブレーキ"や"ジャンプ"と言った説明がしてあった。
しかし亮輔は祐介にその説明はしなかった。
それはチャッチャを入れる祐介へのちょっとした懲らしめと
自分のゲームだから勝ちたい!という欲でもあった。
ワイワイ言いながらお互い好きなキャラクターを選び、
いざ、スタート。
始めのコーナーで祐介は「あ〜〜!」
と、気持ちいいくらいのコーナーアウト。

亮輔は笑った。
「アハハハ。」
気持ちいい位の自分の罠へのハマりっぷりに。
「りょうすけ〜〜!だましおったな〜〜!」
ガタガタと砂煙を上げる祐介の車。

亮輔の車は"ブレーキ"と"ジャンプ"を駆使して綺麗に曲がる。
「アハハハ、、、いやちがわないって!ゆうすけがさいごまできかないのがわるい。」
そんな掛け合いをしながら喧嘩のように言い合い走る2人。
「おりゃ〜〜!」
最期のコーナーで祐介の車が横から突進して亮輔の車をふっ飛ばした。

「やってやったぞ!」
得意げな祐介。
「あ〜〜!なにするんだよ〜!ゆうすけ!そういうたたかいじゃないっての!!」
亮輔が「ふざけんな!」と、コントローラーを捨てるように置き、祐介に突っかかる。
そんな2人をよそにゲームは"ピュー"という笛のような合図で終了を告げた。
「ちょっとおふたりさん。」
2人に言葉を掛けたのは梨緒だった。
「わたしのことをおわすれではないですか?」

"勝者"の所に梨緒が使っていた"ピーチ姫"が喜びながら走っている。
「あ〜〜!マジか〜〜!」
「やられたわ〜。」
まさかの勝者に驚きながらも。
その得意げな、猫のようなかわいい笑顔に
2人は勝敗よりも、何かこれでよかったような
感覚にとらわれた。



「《梨緒→かわいい笑顔》!!」
2人がタイミングを計ったかのように同時に答える。

「わかるわかる!あの猫みたいな笑顔。ドヤッて顔がかわいいんだよな。」
「そうじゃ!もともとかわいい顔をしとるが、あの明るい笑顔が好きなんじゃ。」
ワイワイ女子がカワイイものを見つけたように
キャピキャピさわぐ亮輔と祐介。

「そう、あれを見るだけで、なんか全部どうでも良くなるような、、、。」
「やっぱかわいいの〜〜梨緒は、、、。」
「ああ、、、かわいいよ、、、。」
そう言うと、ふと思い出したように
また少し悲しげな表情で2人の表情が曇る。

「なあ亮輔、、、。」
「、、、ああ。」
途切れ途切れで会話する2人。
「、、、わしらずっと一緒じゃよな?」
「、、、、、、。」
いつもより長い間で亮輔が答える。
「、、、ああ。」
亮輔がうつむく。
「、、、あれが、、、夢じゃったんじゃよな?」
祐介がそんな亮輔に訴える。
「、、、、、、。」 
亮輔はその問いに答える事が出来ない。
そして、2人が到着したのは
"三嶋"と表札に書かれた家だった。
2人は今日は学校というわけではなかった。
制服を着て、
梨緒の家へ行く前に
どうしても部室に寄っておきたかった。
それは、、、。なぜなら、、、。