2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

トライアングル【第3章】白熱(はくねつ)③

「うおおおお!」 明らかに体格に合っていない"三輪車"を窮屈そうに漕ぐ祐介。 ペダルも車輪も小さく、漕いでも漕いでも思いの外進まない。 50メートルほどの距離が果てしなく遠く感じる。「ペダルはつま先で蹴るようにして漕ぐ。」 亮輔も細かくペダルを漕…

トライアングル【第3章】白熱(はくねつ)②

火薬の破裂音の高い音が響き渡ると同時に、両者とも小刻みに額にバットを当てたままバットの周りを回り始めた。 「い〜〜ち、に〜〜、、、、。」 「うおおおおお!」 クルクル回る景色の中、祐介は思い出していた。「わしはこうやって亮輔と戦うのは嫌いじゃ…

トライアングル【第3章】白熱(はくねつ)①

チカッ! 夏の日差しが目に入り眩しくて視界が一瞬光で見えなくなる。 亮輔はカートで敗北したものの「負けるわけにはいかない!」と、次の勝利方法を計算していた。 「前回カートであったから今回は『車』、『コース』、『走る』であろう。これでどれが来て…

トライアングル【第2章】駆走(くそう)⑤

女神がこの"レース"をダイジェストで振り返る。「まずは両者スタートをします。ここで先におどり出たのが亮輔選手。」亮輔は思い出す。「スタート!」女神が旗を振り下ろしたと同時にロケットスタートを謀る亮輔。後ろでは「騙しおったな〜〜!」と叫ぶ祐介…

トライアングル【第2章】駆走(くそう)④

カタカタカタカタ、、、、 機械が空回りするような音が耳に入ってくる。 一瞬自分がどこで何をしているのか分からず呆然としてしまう亮輔。 朦朧とする意識の中、上空を見上げていると うっすらとした視界にぼんやりと女神の姿が映り、 「はっ!」と、我に返…

トライアングル【第2章】駆走(くそう)③

赤いカートの亮輔の目の前に"左"の大きな標識と共にガードレールが見えてくる。 それをしっかり減速をし、アウト→インで左にハンドルを切る。 「そう!今の俺があるのも梨緒のおかげ!」 思い返しながらもしっかりとコース取りをする。 次に待ち構えるコンク…

トライアングル【第2章】駆走(くそう)②

亮輔にはすでにこの連想ゲームの勝ち方が分かっていた。 「この戦いでの勝利の方程式!それは先手を取ること。そして、その先手で次の手まで自分の思い通りの対決に持ち込む事。」 亮輔の考える勝利の方程式とはこうだ。 まず1戦目。自分の得意な種目で勝負…

トライアングル【第2章】駆走(くそう)①

ブンブンブン! 晴れ渡る青空の元、舗装されたアスファルトから熱気で湯気が立ち上がる。 そんな中、蜃気楼のようにうっすらと浮かび上がる2台の車。 今にも走り出しそうな赤と青にカラフルに彩られた車体から少しの高めのエンジン音が響き渡っている。 「…

トライアングル【第1章】開扉(かいひ)②

そして話は戻る、、、 今にも降り出しそうな生憎の天気。 分厚い雲の中でゴロゴロ雷鳴が轟いている。 そんなグラウンドの中央、ピリピリした雰囲気で睨み合う 亮輔と祐介。 「祐介!てめ〜4番バッターになってから調子こいてんじゃね〜ぞ!打率3割のくせによ…

トライアングル【第1章】開扉(かいひ)①

「キーッ!」"野球部"と書いてある部室の扉を開く。 窓から朝日が差し込み、眩しさで目を細めながらも、しかめっ面で部室の中を覗く。 開かれた雑誌、脱ぎ捨てられた服、バットやグローブが乱雑に散らかったいつもの部屋。 その中央、背もたれもない物が積ま…

トライアングル〜事端(じたん)〜

ミーンミーン・・・・夏休みも近づき、校舎の脇にある1本の木ではアブラゼミが身体を小刻みに揺らしながら 夏の始まりを軽快に奏でる。 サワサワと揺れる土手の芝生。 その芝生の向うに見えるグランドでは 少年たちが運動に励んでいる。 空は青く映え渡り モ…