トライアングル【推理 回答】

トライアングルのジャンルの《推理》

 

この小説はもう1つ結末を

推理、考察して貰いながら読んで貰う

と、いうような楽しみ要素もありました。

 

皆さんも感じたであろう違和感と

伏線から結末をどのように推理すれば辿り着いたのか

回答を発表いたします

 

違和感①死んだ人間の復活

まずは分かりやすい違和感。亮輔が殺してしまった祐介を女神を倒す為に、連想「注射」で、復活させるシーン。

女神の能力は物と場所を移動させれる能力でした。

その能力を譲渡された亮輔たちも拳銃などを

出現させれるのですが

あくまでそれは現存するものを自分の元へ召喚させるような能力でした。

死んでしまった祐介はこの能力では復活しないはず。では、祐介を復活させたのは??

何か別の力が働いたのだろうか?

 

違和感②知るはずの無い情報を知る梨緒

公安調査庁のエージェントと名乗った梨緒。調査で分かった女神の情報を明かして、

宇宙人の女神が地球を侵略しようと企んでいると

知る事になるのですが

ここでも違和感。

亮輔に女神への疑念を問いかけている場面。

梨緒が女神の存在に気づいたのはグラウンドで野球をしている所と言っていた

なら、何故戦いの成り行き、女神との会話まで詳細に分かっているのであろうか?

ここで梨緒への疑念が生まれる。

もしかして黒幕は梨緒なのか??

だとしたらその目的は??

 

違和感③冒頭の突然やってきたタイミング

梨緒が黒幕だとして目的は何なのか冒頭から読み直すと

野球のグラウンドでそれが突然やってきたとある 

野球の球が空高く上がったタイミングでやってきた"それ"。

"それ"がもし、女神であればグラウンドで喧嘩を始めたシーン。その時じゃなかったとしても女神は始めは梨緒の父の方がターゲットで梨緒を見つける。グラウンドまで到達するのは梨緒の心を読んで関係性を知った後の方になる。突然やってきたとは言い難い。

と、なると女神ではなければ突然やってきた"それ"とは何なのか?

 

梨緒が関係する

野球の打球が空高く上がった時に突然やってきたのが"それ"なのであれば

それは梨緒が野球の打球で下敷きになったシーン。

もし、物語がその事故から始まったとすれば、、、

 

梨緒が言いたかった(したかった)事とは??

 

違和感④突然発表された梨緒の職業

梨緒がしたかったこと。

そう考えた時に、梨緒のこの話での役割。

役割といえば仕事。公安調査庁のエージェント

として仕事をしていると公表した梨緒。

急にそんな事言われても

亮輔も戸惑いを隠せない。

実はこの役割。

公安調査庁 審理室 のエージェント。

"裁定"者とされるこの職のちょうど"裁定"の部分にだけ"  "がついている

ちなみに"裁定"とは

正義の制裁を加えるというような意味ですが

それは日本語では神のような存在が有無を言わさず悪人に裁きを与えるようなイメージ。

 

この役割に他に意味があるとしたら、、、

 

他の意味への変換。

どのように変換するか。それには物語をはじめから考え直す。

この話は梨緒の考える連想ゲームの話。

りお、連想、と純粋に考えると殆んどの人が

リオ→リオデジャネイロ

と、結びつくのではないか

 

では

この役割"裁定"これを

梨緒の言いたいこと。リオの言葉。

リオデジャネイロの言葉

つまりブラジル語に変換すると。

arbitagem 裁定

この単語には実は日本語にはない他の意味がある

arbitagem 仲裁

ブラジルでは裁定は仲を取り持つ事を意味する。

つまりは

仲直り

 

梨緒は仲直りさせたかった

 

野球の最中の事故から始まり

 

現実ではありえない死んだ人が復活出来、

 

亮輔と祐介を仲直りさせたかった。

つまりは

おそらくこの話自体が空想

梨緒が二人を仲直りさせる為に見せた夢のような話。

 

そして始まったのが事故からなのであれば

そんな事をしないと仲直りさせれない。

おそらく

その時点で梨緒はこの世にはいない。

 

(解答は)

二人が原因で起した事故で亡くなった梨緒

が二人の自責の念や

悪くなってしまった仲を取り戻してほしい

そう願って見せた願いのようものなのであろう

 

ヒロインの名前が リオ なのも

戦いが 連想ゲーム なのも

梨緒の職業が 裁定 者 なのも

 

仲直り

 

に結びつける為の

 

戦いが

レース、競争、ボーリング、バドミントン

など誰もがやった事のあるものなのは

身近で思い出に残ってる

思い出話に繋がるような

 

話の確信に迫る為の伏線なのでした

 

 

トライアングル【あとがき】

最後までご拝読頂きありがとうございます。

 

この作品は誰もが経験した事があるであろう

青春時代の甘く切ない恋愛模様

不器用で叶わぬ恋を大スペクタルで描いてみました。

 

気付いて欲しかったのはこの作品の裏に隠された

梨緒の想い。

梨緒が訴えかけた    "梨緒's  STORY"   です。

 

この物語は紐解けば

野球部の練習中の事故。

梨緒の死から始まります。

 

作品の中で女神と出合い→レース→競争→

と、進んで行きますがこれは3人の思い出に沿っているんです

 

女神(幼稚園)→レース(1年生)→競争(2年生)

と、いうように

 

これは梨緒の「思い出して!楽しかった、仲の良かった日々を!」という想いからなのです

 

そして、野球の戦い!

それは事故と繋がります

その後それは女神の仕業だったと知ります。

つまりは梨緒は「女神(予期せぬ力)のせい!」仕方なかった。そう言いたかったのです。

 

さらに二人がヒートアップするシーンで

ボクシング→剣道→弓道→銃撃戦

へと進んできますが

その後、すべてを仕組んだ女神を

銃を持った女神を

弓道→剣道→ボクシング→

さらには野球

で、トドメを刺すことで

話を逆行させ

無効化、精算させたかったんですね

「事故は事故。忘れなさい」と。

 

2人が原因で起きてしまった事故。

実際2人は自身を責めるわけですが

梨緒からしたらそんなに自分を責めて欲しく無かった。

 

何より自分が原因でもつれてしまった関係が嫌だった。

その精算も含めて関係が修復するようにしたかった。

アルバムの最後からも分かるように

関係を修復しようとしていた

その矢先の事故。

全てがこじれてしまった後悔が見せた

梨緒が作った"夢"なんですね。

 

夢というよりも願い。

梨緒はずっと願ってたんです

『3人、、、ずっと仲良く』

と、、、

 

この作品を通じて伝えたかった事は

『相手を思う事の大切さ。

争い、いがみ合う事で生むものとは、、、』です

 

誹謗中傷、迷惑行為、凶悪事件

コロナが蔓延するとそれらも蔓延してきて

有名人の自殺や、暴走運転など

ニュースで騒がれる日が多いように思えます。

 

もちろんストレスを抱える世の中です

大変なのはわかりますが

 

梨緒のような自分よりも相手を思えるような気持ち

 

そういう人がより多く増えてくれれば

世の中もコロナも

自分を取り巻く環境も

変わってるのではないのか?

 

そういう想いをこの作品を通じて

少しでも感じて頂ければ

と、思っております

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トライアングル【梨緒's HISTRY】③

〜中学校入学。大人になるにつれ、3人の関係に、異変が起こる〜〜

 

黒板の前でキリッとしたかっこいい面持ちで

何やら難しい方程式を書きながら説明する亮輔》

頭のよく、スポーツも出来る優等生な亮輔。

周りの信頼も厚く、リーダーシップを発揮する。

優しい性格も相まって女子はほっとかない。

将来は学者や政治家、起業など頭を使って自分でなんとかする仕事をしたいと思う。

 

 

バットを豪快に振る祐介》

スポーツ万能。不器用ではあるがその身体能力と

大胆さでムードメーカー的存在。

その男らしさと真っ直ぐな人柄に女子の中でひそかに人気。

将来はスポーツ選手か建築業か。

身体を動かした仕事がしたいと思う。

 

 

ミス和泉姫中学のグランプリの時の写真。

ドレス姿で微笑む梨緒に光が差し込んでまるで

女神さまのよう》

美しく男子からの絶大な人気とその持ち前の

裏表のない明るい性格で女子にも圧倒的な人気で

ミス泉姫中学に選ばれた梨緒。

成績もよく、スポーツはだめだめだが。

そのルックスはアイドルにでも、頭の良さは

キャビンアテンダントでも

人柄の良さは看護婦でも何にでもなれる可能性を

持っていた。

 

 そんな3人の写真の中央には、梨緒の可愛い字で

−−仲良し3人組−−と書かれていた。

 

 

《祐介と梨緒とで桜の木の前で制服で写った写真。遠くには全く意識せず偶然写った亮輔の姿》

下には

−−入学式−−

と、書かれている。

 

 梨緒を取り合いギクシャクする亮輔と祐介。

   その頃から3人で写真を撮る事が

      ほとんどなくなった。

 お祝いの時も行事の時も3人で行動する事が

        無くなった。

 

 

《野球の試合で2人を応援する梨緒の姿

(マウンドには亮輔。奥のライトには祐介が小さく写る)》

下には

−−がんばれ!泉姫の雄姿たち−−

と、書かれている。

 

 

    梨緒は2人ともが大事だった。

 だから2人の想いに答える事が出来なかった。

 自分がいなくなれば2人は仲良くできるのかと

     自分を責めた事もあった。

   それでも梨緒は2人を支え続けた。

 

 

そして・・・

 

 

数少ない3人で映った

中学生になってからの写真・・・

 

 

アルバムの最期のページにある写真には・・・

 

 

《泥だらけのユニフォームでお互いソッポを向く

亮輔と祐介。その真ん中で2人の肩をグッと手繰り寄せ、くっつく梨緒》

 

下に書かれていたのは・・・

 

−−3人でいれる最期の夏。

悔いを残さないようにがんばるぞ!−−

 

そこに映る梨緒の顔は、

猫のような笑顔に満ちていた。

 

そう、

『3人、、、ずっと仲良く!』

と、願った頃と変わらずに・・・

 

 

 

 

ごめんね・・・梨緒・・・

 

 

ありがとう・・・

 

 

そして・・・

 

 

さようなら・・・

 

 

 

 

 

 

トライアングル【梨緒's HISTRY】②

〜〜小学校入学。沢山の思い出を3人で作った〜〜

 

《梨緒の誕生日会。》

下には

−−梨緒ちゃん6歳−−

と、書かれている。

(手で間違った"5"と出している梨緒。

後ろでは何故かすでに鼻にクリームをつけた祐介が、指にクリームを付けて亮輔にもクリームを

付けようとし、亮輔は「やめろ!」と、逃げている。)

 

   誕生日にはいつも3人でお祝いをした。

 

《飼育係で小屋で動物のお世話をする写真》

下には

−−うさぎさん大好き−−

と、書かれている。

(ウサギを大事に抱え、餌の人参を口に与える梨緒。後ろではニワトリを追い回す祐介。別のニワトリに服を引っ張られ「助けて!」と檻を掴み外の先生に訴えかける亮輔。)

 

   係りとかクラブ活動も一緒にやった。

 

《運動会の写真》

下には

−−一番おめでとう−−

と、書かれている。

(ゴールテープを1着でくぐって笑顔で「1番!」とやる亮輔とやる亮輔。と、そのゴールで待っていた梨緒の2ショット写真。亮輔は何故か女装をしている。その後ろでは吊るされたパンを食べようと「ガー!」と同じく女装をしてジャンプしている祐介の姿。)

 

       楽しかった運動会。

 

《理科室の実験の時の写真》

下には

−−大失敗!!−−

と、書かれている

(試験管が爆発して顔を黒く汚しビックリしてる顔の梨緒。心配そうに駆け寄る亮輔と爆笑する祐介。)

 

     勉強した。失敗もした。

     でも3人なら心強かった。

 

《修学旅行》

下には

−−修学旅行。京都、奈良にて−−

と、書かれている。

金閣寺の前で撮った梨緒と亮輔の2ショット。

2人の間には少し恥ずかしそうに距離があった。)

 

       思春期になると

    お互い少しずつ男女を意識しだす。

 

《6年生、最後の学芸会》

下には

−−お似合いの王子様とお姫様−−

と、書かれている。

(白雪姫の最後のシーン。おでこにキスをして目覚めた梨緒を

目覚めた喜びで祐介王子は空高く抱き上げクルクル回って喜ぶ。)

 

     同時に周りからのチヤホヤで

     お互いの存在を意識しだす。

 

『大好き』の意味が少しずつ変化をする。

 

トライアングル【梨緒's HISTRY】①

アルバムを開く。
そこには梨緒の幼い頃からの写真(きおく)
が記されていた。


《小さいピンクの服を着た赤ちゃんの写真》 
下には
−−7月7日 りおちゃんたんじょう!−−
と、かわいい字で書かれている。

   梨緒の生まれは愛知県名古屋市
   2400gの小さな女の子。


《人形をギュッと抱きかかえ小さい手で
お母さんの服を引っ張る梨緒》
下には
−−りお2歳 いまだ甘えん坊まっさかり−−
と、書かれている。

   実は幼い頃は病気がちで、
   よく入退院を繰り返していた。
   だから人への免疫が少なく、
 いつもお母さんにべったり甘えていた。


〜〜そんな梨緒は、同じアパートに住む同じ年の2人と出逢う〜〜


《アパートで母と子、3世帯で初めて写った写真》
下には
−−同じ年のりょうすけくんとゆうすけくんと−−
と、書かれている。

梨緒4歳。その写真の梨緒はお母さんの足につかまってお母さんの陰に隠れている。
初めは恥ずかしくて隠れてばかり。
他人と、同年代の子と、ましてや男の子と。
どう関わっていいか分からなかった。


《幼稚園の裏山での写真。『ゴー!』と引き連れる祐介に、亮輔は一生懸命『こっちだよ』と梨緒の手を引っ張る》
下には
−−3人で冒険へレッツゴー!−−
と、書かれている。

 祐介の強引な勧誘と亮輔のやさしさで
    段々仲良くなっていく3人。
  3人ならどこまでも行ける気がした。


《祐介が自分よりも大きい犬から梨緒を大きく手を広げて守っている写真。》
下には
−−りおちゃんを守る ナイト−−
と、書かれている。

  祐介のたくましさで何度も救われた。


《亮輔が折り紙を丁寧に梨緒に教えている写真。》
下には
−−やさしくリードしてくれる王子様−−
と、書かれている。

   亮輔はやさしく導いてくれた。


 そんな2人の事を梨緒は大好きだった。

トライアングル【最終章】連想(ツラナルオモイ)⑤


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そして梨緒は亡くなった、、、。
完璧に故意ではない事故、、、。
誰が責められるわけでもない、、、。
しかし2人は自分を責めた。

その数日後、、、2人は同じ夢を見た。
それは女神を倒す夢。
あの時、女神と出会い、能力を与えられ、
お互い傷付け合い、それが女神の陰謀だと知り、
女神を倒しに行く。
全ては夢の出来事。
それは梨緒からのメッセージだったんだろう。
思えば
4年生のバドミントンの時も、
3年生のボーリングの時も、
2年生の競争の時も、
1年生のレースゲームの時も、
梨緒は亮輔と祐介の事ばかり思っていた。
2人の事ばかり考えて行動していた。


2人は黒縁の梨緒の写真の前で泣きじゃくる。
亮輔は目を覆い隠し、崩れ落ち声をあげながら、、、。
祐介は仁王立ちで突っ立ったまま、上を向いて大粒の涙を
頬に伝えながら、、、。


どうして気付かなかったんだろう。
梨緒の行動に、、、。
どうして気付かなかったんだろう。
梨緒の想いに、、、。
「、、、すまんな梨緒、、、すまん、、、。」
祐介が言葉にならずただ謝る。
「、、、俺たち、自分の事ばかり考えてた、、、
それなのに、、、お前は、、、。」
亮輔達は気付く。
梨緒の願い、、、それは出逢った頃まで遡る。



幼稚園時代、、、。
「は〜〜い。じゃあみんな!今日はみんなの夢を聞いちゃきましょう。」

幼稚園の先生がみんなの前で発表会。
その手には青いドレスの色白のかわいい人形が握られていた。
「『妾は女神。あなたたちの願いを叶えてあげましょう。』」

先生が得意げに声色を変えて人形を操る。
「よし!じゃあ先頭から!」
先生の声に戻り、女神の手を使って指を指す。
「亮輔くん!」

幼いおかっぱのいかにも真面目そうな亮輔が答える。
「はい!」
「ぼくのゆめは『めいたんていコナン』みたいな
めいたんていです!」

うん!よろしい!というように先生は頷く。
「はいはい!せんせー!!」
次の祐介が先生の答えも待たずに手を挙げる。
「はい!じゃあ祐介くん!」

丸坊主のいかにもヤンチャそうな祐介が勢いよく
立ち上がり答える。
「わしのゆめは『ルフィ』みたいな、つよいかいぞくおうじゃ〜〜!!」
その元気のいい答えに、おお!と先生は圧倒されながら。
「いいね。2人ともいい夢だね。」
褒められ喜ぶ2人。

その横で二つ縛りの髪の梨緒がモジモジしている。
「あ、じゃあ次、梨緒ちゃんだね。」
「う〜〜んと、、、」
ちょっと恥ずかしそうに焦らす梨緒に
先生はピンときた。

乙女のカンで先に聞く。
「あ!梨緒ちゃんは、さては好きな人と結婚だな〜〜。」
もともと先生は3人が仲がいいのは知っていた。
どちらかの事が好きなんだろう。
そう考えていた。
しかし、梨緒の答えはもっと純粋な事だった。
「ううん、、、わたしのねがいはね、、、。」
梨緒が女神の夢に掛けた想い。
2人に思い出して貰いたかった事。
それは、、、。
梨緒は猫のようなかわいい
満面の笑顔で答えた。
「さんにん、、、ずっとなかよく!」

トライアングル【最終章】連想(ツラナルオモイ)④


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「、、、梨緒。、、、梨緒。」
救急車に乗せられた梨緒の姿に居てもたってもいられず、
「俺も連れてって下さい!」と、静止も振り切り
強引に乗り込んだ亮輔は
監督と共に"手術室"と、赤いランプの光る部屋の前の椅子に
前のめりで口の前で両手を結び、祈るようにつぶやく。

つぶやく度に一つ、また一つと思い出す梨緒の顔。
地団太を踏んで悔しがる梨緒の顔。
プーッと膨れて怒る梨緒の顔。
猫のように笑う梨緒の笑顔。
「何でこんな時に梨緒の顔ばっか浮かぶんだ、、、。」
走馬灯のように駆け巡る梨緒との思い出に、悪い予感が
頭から離れなくなる。

俺はバカだ、、、。祐介に八つ当たりして、、、。
祐介が悪いと言うなら打たれた俺のほうが悪い。

祐介の打球が偶然当たったのも、俺が打たれさえしなければ起こらなかったのだから。」
どう考えても祐介が悪いわけじゃない。
でもあの時はああ言うしかなかった。
どこかにぶつけたかった。誰のせいでもない。
でも誰かのせいにしたい。
誰かのせいにして解決するはずがないのに、、、。
「、、、俺のせいだ、、、」
亮輔は自分の弱さを悔やんだ。

自分はいつも梨緒に支えられてばかり。
そんな自分が嫌で理論で武装して、
強い気でいて、、、。
でもそれは弱さを見せるのが嫌で。
弱い自分を認めず祐介のせいにした。
本当は自分が悪いのに、、、。
両の目をつむり、悪い予感を払拭するように
額に結んだ手を移し、強く祈る。
「、、、俺の命を削ってもいい!、、、いや、俺の命を代わりに持って行ってくれていい!」
「だから、、、神様!、、、どうか、、、どうか、、、
梨緒だけは!」

どうしようもない。
こんな時に自分は何も出来ない無力さから、
「、、、、、助けてくれ、、、、、」
目は血が出そうな位ちからいっぱいつむり、
ずっと結んだ指は、真っ赤になる。

その時、、、部屋のドアを開ける音が、、、。
力強くつむった目を、
ゆっくり開けた亮輔の虚ろな視界に
ぼんやりと青い人影が見える。
「手術は終わりました、、、。」

青い人影の上の"手術中"のランプは消えていた。


祐介の手には木製のバットが握られている。
それは、普段は轟音を響かせながら素振りをする愛用のバット。
事故の後先生の指示で帰宅した祐介は、制服のまま
何をするわけでもなく、気付けばいつものように
木製バットを握っていた。

何千、何万、数え切れないほど振ってきたバット。
いつもは一心不乱に、握れば力が湧いたように振れる。
しかし、握ると感覚が蘇る。
ホームランを打った時の痺れ。
ピリピリとした掌を見ると思い出す。
大きく飛んだ打球、、、。

ガタガタと崩れるような音、、、。
木材から突き出る梨緒の腕、、、。
『お前の打った球で、、、!梨緒が、、、。』
祐介の開いた掌が震える。
目をつむっても、、、バットを握っても、、、
纏わり付くように消えない記憶。
「あああああああああああああああ!」
怒りと絶望が入り混じった。
行き場の無い思いでバットを地面に叩きつけた!

バキッ!
鈍い音を立て二つに折れたバット。
それは今までの全てが終わった。
祐介をそんな気持ちにさせた。
「、、、もう、、、わしは、、、バットを振らん。」
梨緒を傷付けてしまった自分への贖罪。

梨緒にも、亮輔にも合わせる顔がない。
そんな祐介の元へ、電話の子機を握ったまま、
慌てた様子で祐介の母親が声を掛ける。
「祐介!!、、、梨緒ちゃんが、、、!!」

トライアングル【最終章】連想(ツラナルオモイ)③


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三嶋家に入るとそこにはあの
"得意げに笑う梨緒のかわいい笑顔"、、、
の写真。
それは黒縁の枠に包まれてている。

亮輔が部室に寄ったのは"現実を確認したかったからだった。
これが現実。
梨緒はもうこの世にはいない。

きっかけはあの日、、、。
この物語の冒頭。

キーン!
バットの軽快音と共に空高く飛び上がった球。
ーーーいつもの日常にそれは突然訪れたーーー
「キャ〜〜〜!」
飛び上がった先に起こった叫び声。
ーーーそこに行くと現れたのは悲惨な光景だっーーー
木工室の木材に潰される梨緒。
それは事故だった。
野球部の練習中。
亮輔が投げた球を、、、祐介が打ち、、、
偶然立て掛けてあった木材に当たった、、、
その下に偶然居た梨緒は下敷きに、、、。

非情な現実を目の当たりにする。
「梨緒が、、、梨緒が、、、。」

梨緒はどうなってしまったのか?
無事でいて欲しい。
不安。
そして、、、
何で梨緒がこんな目に?
疑念
どうしてこうなってしまったのか?
憤り

いろんなグチャグチャな想いが交錯する。
そんな時目に入ってしまったのは、
木材の横に転がる野球の球。
「やっぱり、、、俺達が、、、梨緒を、、、」
完璧にすべてが結び付いてしまった。
やり場のない不安。
どこにも向けられない怒り。
それが
その球を見ると、どうしても我慢できずにこぼれてしまった。

「、、、お前が悪い、、、。」
ボソッと亮輔が力なく小さく呟く。

「、、、あ!?」
なんとなく聞こえた小言に祐介が反応してしまう。

その態度に火がついたように亮輔が祐介に飛びつく!
「お前が!お前が!」
胸ぐらを掴んで祐介の身体を思い切り前後に揺らす。
「お前の打った球で、、、梨緒が、、、!!」
泣きそうなクシャクシャな顔で。

ドン!
無抵抗に身体を振らされていた祐介が
眉間にシワを寄せ、怒りを顕に亮輔を突き飛ばす!
「ふざけんな!あんなもん事故やないか!!」

直立で頭を斜めに傾け顎を突き出し
挑発するかのようにガンを飛ばす。

「〜〜〜!!」
言い捨てた祐介の言葉に
倒れ込んだまま首を左右に大きく
その言葉を振り払うように何度も振る亮輔。
「、、、事故、、、」
そんな言葉で解決して欲しくない。
出来るはずがない!

「うわ〜〜〜!!」
直立している祐介を押し倒し、馬乗りになった。
だって、、、
俺らのせいで、、、

『おい!お前ら!喧嘩はよせ!!』
組み合っている亮輔達を周りの部員が必死に引き剥がした。

その後、すぐ駆けつけた救急車で梨緒は運ばれた、、、。

トライアングル【最終章】連想(ツラナルオモイ)②-2


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小学1年生の時、初めて亮輔の家にゲーム機がやってきた。
"マリオカート"。
小学生低学年でも気軽に出来るゲームだ。

亮輔は始める前にじっくり説明書を独占して勉強をする。
しかし、祐介は説明書を読むのが面倒くさい。
「りょうすけ〜。はやくやろや〜。」
説明書を読むのを任せ、それでも亮輔が几帳面に1ページ目から1ページずつ読み込んでいくもんだから
しびれを切らして「はやく〜〜!」と、我慢出来ずに両腕を上下にフンフンさせる。

「ちょっとまって、、、。」
それでも亮輔は焦らず。それも仕方ない。亮輔のお家のゲームだ。梨緒も「まぁまぁ」となだめる。
仕方なく祐介も「まだ〜?」「そろそろ〜?」と、言いながらもしっかり待っているしかなかった。
しばらくして、
「よし!じゃあそろそろはじめようか。」
亮輔がようやくスイッチを入れる。

"チャッチャー"と軽快な音とカッコイイオープニング画面がテレビに流れ出す。
「おお!」
一同画面に釘付け。

これは面白そう!と、一同さらにテンションを上げる。
「じゃあせつめいするね。」
しっかりと説明書を読んだ亮輔が"1P"というコントローラーを先取りしてここぞとばかりに主導権を握り説明を始める。「もういいわ〜。」という祐介をよそに。
「きほん、この"Bボタン"がアクセルでどんどんスピードがあがって〜。
まがるときはこの"やじるしボタン"で〜。」
実は説明書には"ブレーキ"や"ジャンプ"と言った説明がしてあった。
しかし亮輔は祐介にその説明はしなかった。
それはチャッチャを入れる祐介へのちょっとした懲らしめと
自分のゲームだから勝ちたい!という欲でもあった。
ワイワイ言いながらお互い好きなキャラクターを選び、
いざ、スタート。
始めのコーナーで祐介は「あ〜〜!」
と、気持ちいいくらいのコーナーアウト。

亮輔は笑った。
「アハハハ。」
気持ちいい位の自分の罠へのハマりっぷりに。
「りょうすけ〜〜!だましおったな〜〜!」
ガタガタと砂煙を上げる祐介の車。

亮輔の車は"ブレーキ"と"ジャンプ"を駆使して綺麗に曲がる。
「アハハハ、、、いやちがわないって!ゆうすけがさいごまできかないのがわるい。」
そんな掛け合いをしながら喧嘩のように言い合い走る2人。
「おりゃ〜〜!」
最期のコーナーで祐介の車が横から突進して亮輔の車をふっ飛ばした。

「やってやったぞ!」
得意げな祐介。
「あ〜〜!なにするんだよ〜!ゆうすけ!そういうたたかいじゃないっての!!」
亮輔が「ふざけんな!」と、コントローラーを捨てるように置き、祐介に突っかかる。
そんな2人をよそにゲームは"ピュー"という笛のような合図で終了を告げた。
「ちょっとおふたりさん。」
2人に言葉を掛けたのは梨緒だった。
「わたしのことをおわすれではないですか?」

"勝者"の所に梨緒が使っていた"ピーチ姫"が喜びながら走っている。
「あ〜〜!マジか〜〜!」
「やられたわ〜。」
まさかの勝者に驚きながらも。
その得意げな、猫のようなかわいい笑顔に
2人は勝敗よりも、何かこれでよかったような
感覚にとらわれた。



「《梨緒→かわいい笑顔》!!」
2人がタイミングを計ったかのように同時に答える。

「わかるわかる!あの猫みたいな笑顔。ドヤッて顔がかわいいんだよな。」
「そうじゃ!もともとかわいい顔をしとるが、あの明るい笑顔が好きなんじゃ。」
ワイワイ女子がカワイイものを見つけたように
キャピキャピさわぐ亮輔と祐介。

「そう、あれを見るだけで、なんか全部どうでも良くなるような、、、。」
「やっぱかわいいの〜〜梨緒は、、、。」
「ああ、、、かわいいよ、、、。」
そう言うと、ふと思い出したように
また少し悲しげな表情で2人の表情が曇る。

「なあ亮輔、、、。」
「、、、ああ。」
途切れ途切れで会話する2人。
「、、、わしらずっと一緒じゃよな?」
「、、、、、、。」
いつもより長い間で亮輔が答える。
「、、、ああ。」
亮輔がうつむく。
「、、、あれが、、、夢じゃったんじゃよな?」
祐介がそんな亮輔に訴える。
「、、、、、、。」 
亮輔はその問いに答える事が出来ない。
そして、2人が到着したのは
"三嶋"と表札に書かれた家だった。
2人は今日は学校というわけではなかった。
制服を着て、
梨緒の家へ行く前に
どうしても部室に寄っておきたかった。
それは、、、。なぜなら、、、。

トライアングル【最終章】連想(ツラナルオモイ)②-1


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亮輔が再度思い出す。
次は小学2年生の頃。
パーン。ドンドン。
万国の旗や赤と白の飾りで賑やかに彩られた今日は運動会。
沢山の父兄や校舎中の生徒達が集まり「頑張れ〜!」
と、賑やかにお祭りのように騒ぐ。
そして次は小学2年生の"50m走"だ。
亮輔が真ん中に立ち、6人同時に横列に並ぶ。
もちろんこの時点で亮輔はある程度足が早かった。
かけっこも得意だ。
「位置について〜!」
先生がピストルのトリガーを引く。
「よ〜〜い。」
得意げに真っ直ぐ先を見て亮輔は走るポーズをする。

先生が耳に腕を当て真っ直ぐ腕を伸ばして高々とピストル
を上げた。
パーーーン!
銃声と共に一斉に6人が走り出す。

10mもしないうちから頭一つ分、他の走者よりも抜きん出てきたのはやはり亮輔だった。
他の走者も顔を赤くしながら一生懸命走る。
亮輔も負けじとまだ2年生のつたないフォームではあるが
バタバタと走る。
少しずつ亮輔と他との差が開き始める。
しかし、半分を過ぎた辺りで異変が起きる。
「あ!」
足がもつれてドテンと亮輔は転倒してしまったのだ。

「う〜〜〜。」
顔まで砂まみれにして亮輔は泣き出しそうになる。
膝小僧も擦り剥け血が出ている。
どんどん横から他の生徒が抜かして行く。
亮輔はそれでもおかまいなしに立ち上がろうとせず
その場で
「うわ〜〜ん。」
泣き出してしまう。
実は亮輔はこの頃までは泣き虫だった。

何かあると泣き、気に入らないと泣き、、、
やさしくて、勉強も運動も出来き、女子には
人気だったが
男子からは『泣き虫りょうすけ!』
と、からかわれていた。
それに納得していたわけではない。
今思えば、『認めて欲しい』『気にして欲しい』
と、いう思いが"泣く"行為になっていたんだと思う。
その時はそれしか表現の仕方が分からなかった。
その場で泣きじゃくる亮輔。
しかし競技の最中。他に競技をしている子もいる中
誰も助けには来てくれない。

するとそこに先に女子の競技を終え、近くに居ないはずの梨緒が走り寄ってくれていた
泣きじゃくる亮輔に梨緒は
「ほら、りょうすけ。行くよ。」
と、優しく手を差し伸べた。

梨緒は自分の競技を終えて違うところに居たはず。
なのに転んだ亮輔にすぐに駆けつけた。
きっと応援してた亮輔が転んだ瞬間にはもう駆け出していたのだろう。
人の目や周りの事をかえりみず、ただ亮輔が心配で走り出した。

そんな優しさを感じた時に『なんて梨緒は凄いんだろう』
と、今まで自分の事ばかり考えて主張していた自分のちっぽけさを実感した。


亮輔は答える。
「《梨緒→やさしさ》。あの慈悲深い優しさで、俺は
『泣き虫りょうすけ』から卒業した。」

亮輔が祐介の方を向き共感を求める。
「なんか梨緒ってあれだよな。無邪気で天然で、自分の事より人の事を気にして、、、。
逆にそれが『俺のほうがしっかりして守ってやらないと』って思わせるんだよなぁ。」

それに祐介も共感を覚える。
「そうじゃな。男らしさを自然と引き出させる天才というか、、、。それに加えて、、、」
そこまで言って祐介が思い出したように言葉を付け加えた。
「あっ!そうじゃ。《梨緒→〇〇》」